転職エージェントを利用するデメリット(採用責任者が解説)

お金の話

転職活動は、雇用契約をめぐる採用企業との交渉です。

交渉・契約においては、自分のメリットだけを考えて、自分の意見や権利を声高に主張するだけでは上手くいきません。

交渉を成功させるには、相手方の立場やメリット・デメリットを理解することが大切です。

 

転職するときに転職エージェントを活用される方も多いと思います。

転職エージェントは、転職者が無料で利用できるサービス(一部有料サービスもあります)なので、転職者にとってはメリットしかない、と思えるでしょう。

ですが、冒頭に書いたように、転職活動は、雇用契約をめぐる採用企業との交渉です。

相手方がいるのです。

転職者側から見てメリットしかないからといって、転職エージェントを利用することが有利な転職をもたらすのでしょうか。

 

結論から言うと、転職エージェントを利用することにデメリットもあります。

・転職エージェントを利用しているがゆえに不採用になる場合があります。
・転職エージェントを利用しているがゆえに、採用年収が低くなる場合があります。

 

私は、転職者として転職エージェントを利用したことがあります。

今現在は、採用する側(企業)として転職エージェントと関わっています。

私は数年前に役員(パートナー)に昇格してから、私が所管する部署のメンバーに関しては採用責任者を務めており、採用試験を実施し、採用条件を決め、採用後の教育も行っています。

 

本記事では、転職エージェントを活用することで、転職活動にどのような影響を与えるのかについて、「採用する企業の側」からみて解説しています。

 

転職を検討している方にとって、採用側の立場を理解して有利な交渉・転職をする一助となれば幸いです。

転職エージェントとは

転職希望者
転職希望者

転職エージェントって何をしてくれるの?

オレンジ
オレンジ

では、まずは転職エージェントが転職希望者に提供するサービスを見ていきましょう。

転職エージェントは、転職希望者に転職候補先(企業)を紹介する、というサービスを提供しています。

転職エージェントは、公開・非公開の求人情報を多数保持しており、転職希望者に合いそう企業を紹介し、転職活動を支援します。

企業の紹介だけでなく、面接の練習などサービスを提供している転職エージェントもあります。

また、多くの転職エージェントは、内定後の労働条件の交渉(年収など)も代行します。

転職希望者は、通常は無料で転職エージェントのサービス(一部有料サービスもあったりする)を利用できます。

転職エージェントは、転職希望者に企業の求人紹介などの転職支援を無料で提供している。

 

転職希望者
転職希望者

無料で転職活動を支援してくれるなんて、素敵なサービスですね。

オレンジ
オレンジ

そうですね。転職希望者にとっては夢のようなサービスだと思います。

オレンジ
オレンジ

では、あなたは転職するときに、転職エージェントを活用したいですか?

転職希望者
転職希望者

無料だし、デメリットはなさそうです。もちろん転職エージェントを利用したいです。

オレンジ
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まあ、そうですよね。私も転職するときに転職エージェントに支援をお願いしたことがあります。

 

 

転職希望者
転職希望者

ところで、無料でサービスを提供しているのなら、転職エージェントはどうやって儲けているの?

オレンジ
オレンジ

いい質問ですね~。
採用する企業側の立場を理解するには、まずは転職エージェントのビジネスモデルを理解することが必要です。

オレンジ
オレンジ

なので、次に転職エージェントのビジネスモデルを見ていきましょう。

転職エージェントのビジネスモデル

転職希望者は転職エージェントから無料でサービスを受けることができます。

では、転職エージェントは、どこでお金を稼いでいるのか。

 

転職エージェントは、紹介した転職希望者を採用した企業から仲介手数料を報酬として受け取ります。

相場は、雇用契約の年収の30%~40%程度(完全成功報酬型の場合)となります。

たとえば、企業が年収700万円で紹介された人材を採用した場合、採用した企業は、210万円~280万円の仲介手数料を転職エージェントに支払うことになります。

完全成功報酬型の場合は、企業が紹介された人材を採用しなければ仲介手数料は発生しません(ゼロです)。

また、完全成功報酬型の場合は、企業が内定を出しても転職希望者が内定辞退した場合にも仲介手数料は発生しません(ゼロです)。

 

採用された転職者が短期間(たとえば3か月以内)で退職したときは、仲介手数料の一部を返還する、という契約もあります。

 

最終的な採用の可否に関わらず、書類選考が通過した段階で仲介手数料が発生する一部成功報酬型もあります。

 

他にも、人材を募集している企業が転職エージェントに求人依頼を登録することで費用が発生する場合もあります。

 

このように、転職エージェントは、転職希望者に無料でサービスを提供し、採用する企業から仲介手数料を受け取ることで利益を出しています。

 

転職エージェントの報酬は採用する企業が支払っている。
 
転職希望者
転職希望者

なるほど。転職希望者は無料でサービスを受けられるけど、採用する側の企業が転職エージェントにお金を払っているのですね。

オレンジ
オレンジ

そういうことです。転職エージェントのビジネスモデルはだいたい理解できましたね。

オレンジ
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ここで、また先ほどと同じ質問をします。転職活動をするときに転職エージェントを利用したいですか?

転職希望者
転職希望者

はい、無料だし、デメリットもなさそうです。

雇用契約の年収が高いほど転職エージェントの報酬も高くなるのだから、転職エージェントは私の年収が高くなるように頑張ってくれそうです。

 

転職エージェントを利用した方が、高い年収で転職できそうです!

オレンジ
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なるほど、よく分かります。

私もそう思って転職エージェントを利用して転職活動をしたのですし、支援してくれた転職エージェントにも感謝しています。

オレンジ
オレンジ

ただ、冒頭で申し上げたように、転職活動は、採用する企業との雇用契約をめぐる交渉です。

 

相手がいます。

 

自分にとってメリットしかないからって、それで有利な交渉、つまり有利な転職ができるのでしょうか?

転職希望者
転職希望者

・・・どういうことですか?

オレンジ
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では、交渉の相手、つまり採用する企業にとって、転職エージェントを利用した転職活動がどういうことなのかを一緒に考えていきましょう。

採用する企業側から見た転職エージェント

転職エージェントのビジネスモデルで説明したように、転職エージェントに報酬は支払っているのは、採用する企業です。

オレンジ
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あなたが、採用する企業の立場だと考えてください。

転職希望者
転職希望者

はい。

分かりました。

オレンジ
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転職エージェントを通して応募してきた候補者と、転職エージェントを通さずに直接応募してきた候補者がいるとします。

オレンジ
オレンジ

採用枠が1名の場合、採用の可否をどうやって決めますか?

転職希望者
転職希望者

採用試験の結果で決めますよ。転職エージェントの利用の有無は関係ありません。よりよい人材が欲しいです。

オレンジ
オレンジ

そうですよね。

私もそう思います。

 

では、採用試験の結果、候補者2名が同程度の経験やスキルの持ち主で、採用するならどちらも同じ条件になると判断した場合はどうですか?
実際に、こういう場合はあります。

転職希望者
転職希望者

あっ、その場合は、、、転職エージェントを通さずに直接応募した候補者を採用したいです。

オレンジ
オレンジ

なぜですか?

転職希望者
転職希望者

転職エージェントに仲介手数料を支払わなくてよいからです。
なるほど、ちょっと分かってきました。

採用する企業は、採用活動の予算が限られています。

当たり前ですが、同レベルの人材を同レベルの年収で採用するのであれば、採用活動のコストが低いにこしたことはありません。

これが、採用する企業の立場です。

 

転職エージェントを通すことにより、雇用契約をめぐる交渉で、採用する企業に追加の費用を発生させてしまうのです。

転職希望者は気付かないでしょうが、転職エージェントを通した転職希望者は、転職エージェントを介さずに直接応募した転職希望者よりも最初から不利な状況になっています。いうなれば、転職エージェントを通すことで、30%~40%である数百万円の値上げになるのです。

 

企業や採用責任者の考え方にもよりますが、転職エージェントを通した応募の場合は、内定時のオファー年収を通常よりも低くすることがあります。転職エージェントを通した応募であることに悪印象を頂く採用責任者もいます。私はそういう考えではありませんが、気持ちは分かります。

 

あたなはどう考えますか?

採用する企業側の立場で想像するのが難しければ、こんな例はどうでしょうか。

たとえば、あなたは引っ越しをするので新しく住む部屋を探しています。家賃が12万円/月(144万円/年)の良い部屋が2つ見つかりました。ところが、賃貸契約をする際に、一方は、家賃の4か月分である48万円(年間家賃の33%)の礼金が発生し、他方は礼金がゼロです。

あなたは、どちらと賃貸契約しますか。

転職エージェントの仲介手数料はこの礼金とほぼ同じ問題です(家賃がオファー年収で、礼金が転職エージェントの仲介費用に対応します)。

※なお、礼金は敷金とは異なり退去時に返還されません。

 

転職エージェントを利用すると
・競合する候補者が直接応募の場合に不利になる。
・採用時のオファー年収が低くなる場合がある。
 
オレンジ
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どうですか? 転職活動をするときに転職エージェントを利用したいですか?

転職希望者
転職希望者

ちょっと、悩ましいですね。。。デメリットがあり得ることは分かりました。

転職希望者
転職希望者

でも、転職エージェントに年収交渉を代行してもらえるのはありがたいかなぁ。

お金の交渉ってやり難いし、がっついてる印象を与えるのはどうかと。。。

転職希望者
転職希望者

それに、採用する年収が高い方が転職エージェントの報酬も高くなるのだから、転職エージェントが頑張ってくれて、よりよい条件で転職できそうな気がします!

オレンジ
オレンジ

確かに年収交渉は自分だとやり難い、というのは分かります。

ですが、年収交渉は、転職エージェントがやっても、本人がやっても変わらないのです。

採用企業との年収交渉について

採用する企業としても優秀な人材を競合他社に取られたくはないので、予算の許す限りで、できるだけのオファーをしたいのです。

人材を安く買い叩きたい、とは思っていません。

とうか、そんなことをすれば、せっかくの優秀な人材を競合他社に取られてしまいます。

労働市場が売り手市場である場合はなおさらです。

 

なので、採用する企業の立場として、採用内定を出した場合に、まずは低い年収額を提示して交渉しよう、という考えはありません。

 

企業には給与規定が定められていることがほとんどなので、採用内定した場合に、内定したポジション(職位)、採用者の経験、スキルなどに応じて、ある程度は自動的にオファー年収が決まります。

 

年収交渉の余地がない場合

社内規定により算出して提示したオファー年収に対して、交渉の余地のない企業もあります。

この場合、オファー年収を受け入れて内定を受諾するか、辞退するかの2択になります。

年収交渉の余地はありませんので、転職エージェントが仲介していても採用時の年収は変わりません。

 

年収交渉の余地がある場合

次に、採用年収に交渉の余地がある場合です。

この場合でも転職エージェントが交渉しても本人が交渉しても結果は変わらないでしょう。

 

転職エージェントが、「この候補者はこんなスキルを持っていて、御社に大きな利益をもたらすことができるから、もっと高い年収を提示するべきだ。」なんて言うことは決してありません。

企業の採用ポジションに応募者がどれくらいマッチするか、どういったスキルや経験を評価するかは、採用する企業が決めることです。なので、企業が採用試験をした結果の判断に、転職エージェントが意見することはあり得ません。言ったとしても、説得力が全くありません。

 

転職エージェントができる年収交渉は、

・応募者はできるだけ高い年収を希望しています、と企業側に伝えること

・応募者は競合他社からも内定をもらっている、とほのめかす

くらいです。

 

もちろん、転職エージェントが既に内定獲得している具体的な企業名やオファー額を言うことはありません。そんなことをすれば、転職エージェントの守秘義務違反になります。

 

ちなみに、競合他社からも内定をもらっている、あるいは競合他社にも応募していて選考中です、というのは、転職希望者にとって有力な交渉材料になります。

 

「他の企業から魅力的なオファーを頂いているので、可能であれば採用条件をもう少し検討していただけませんか?(具体的な希望額を言ってもよい)」とか、

「他の企業での選考がもうすぐ終わるので、その結果を待ってから採用条件について改めて検討したいのですが、よろしいでしょうか?」と言うくらい、自分でできませんか?

 

なので、年収交渉は転職エージェントがしても自分でしても結果は変わらないでしょう。

 

年収交渉はしにくい、というあなたの気持ちだけの問題です。

むしろ、自分に自信をもって年収交渉をした方が、言うべきことははっきり言うことができる、というビジネスにとって重要な姿勢を採用側に示すことができるのではないでしょうか。

気持ちの問題として年収交渉がやりにくいから転職エージェントに任せたい、という転職希望者と、自分の年収交渉を自分でやる気概のある転職希望者、どちらに好印象を抱くでしょうか。

私は後者の方をビジネスパーソンとして評価をします。

年収交渉は転職エージェントが行っても本人が行っても変わらない。
自信をもって年収交渉しましょう。
 
転職希望者
転職希望者

そうすると、転職エージェントを通すことは、採用側にとってデメリットしかないのでしょうか?

オレンジ
オレンジ

必ずしもそうではありません。採用する企業としても、人材が思うように見つからない場合は、転職希望者に積極的に自社を紹介するように転職エージェントにお願いすることもあります。

オレンジ
オレンジ

また、私も転職希望者として転職エージェントに支援をお願いしたこともあるので、転職希望者にとってありがたい存在だと思っています。

採用責任者としても転職エージェントを厄介者だと思っているわけではありません。

転職するかどうかも含めて将来のキャリアプランについて一緒に考えてくれる転職エージェントもいます。

また、転職エージェントだけが保有している非公開の求人情報もあります。

転職エージェントは豊富な情報を持っているので、キャリアプランや転職候補の企業を探す相談をするのには最適です。

 

とはいえ、上で説明したようなデメリットもあるので、転職を決意して応募する際には、転職エージェントに仲介をお願するか、自分で応募するかは、よく考えた方がよいでしょう。

私は、自分で直接応募することをお勧めします。

 

転職活動は、雇用契約をめぐる採用企業との交渉です。

交渉・契約においては、自分のメリットだけを考えていては上手くいきません。

採用する企業の立場やメリット・デメリットを理解して、あなたにとって有利な転職をする一助となれば幸いです。

 

おまけ

採用面接で出会った印象的な応募者

オレンジ
オレンジ

ところで、転職エージェントの活用は検討されなかったのですか?

転職希望者
転職希望者

御社に転職エージェントの費用を負担させたくなかったのです。転職エージェントではなく、私にください。

浮いたエージェント費用の一部(100万円)を初年度のボーナスに上乗せするオプションを付ける提案をしました。

この応募者は内定を辞退されました。。。

戦コンの マッ〇〇ゼーに行ってしまいました。。。

 

ご拝読、ありがとうございました。

Orange

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